むぎ綴り


[リュクト中心]13For whom the bell rings

日常

 破滅の日から一年ほどすぎ、ようやく世界は落ち着きを取り戻していた。
 世界声明によって、巨人遺跡と密接かつ一番損傷の激しかった話せる島を、全種族が力をあわせ復興させているところだ。
 アデン首都も犯罪率が低下し街全体が元に戻りつつある。
 そんな中、苦手な仕事から解放された者・教会での人間関係に疲れた者・何も考えてない者の三人がとあるレストランで食事をする事からこの話は始まった。


「どうしたんだリュクト、元気ねぇな」

 そういって真ん中の神官へと声をかけるのは、婚礼を控え幸せ絶頂期にいるレジー。

「どしたの?お腹いたい?」

 そういってすこしかがみこみ顔を覗きこむのは、自称皇子のアルフォンソ。

「……んですか。」

 リュクトの口から小さく呪詛のような呟きが漏れる。

「どうして二人ともそんなに背がたかいんですかああああ!」

 リュクトは全く納得いかなかった。
 出会った当初から背の高かったアルフォンソは別としても、レジーは少なくとも学生時代は同じ背丈だったはずなのに。
 会わなかったほんの数日で少しずつ違和感が生じ、数ヶ月ぶりに会ってみたら皆完全に自分を追い抜いている。
 成長期なのか!?リュクトは納得がいかなかった。
 
「だ、大丈夫だよリュくん。小さくても可愛いって。」
 
 アルフォンソが地雷を踏む。
 リュクトの肩は震え、しっかりと右手に力がこもる。

「女じゃあるまいし、可愛いなんて言われて嬉しい訳ないでしょうが!」
 
 リュクト渾身の一撃が、皇子の鳩尾にヒットする。
 一瞬息も出来ず蹲るアルフォンソ、立ち上がるとレジーの後ろにすばやく隠れた。

「リュックンのばかぁ、乱暴者~、だからいつまでたってもチビなんだ~。」

 その言葉にこめかみを引きつらせてリュクトはたてかけてあったアルカナメイスを構える。
 あぁ、仕方ない。
 レジーはため息混じりに二人の仲を修正し始めた。


 
 夜の食堂、賑わう中リュクトは牛乳を前ににらめっこをしていた。
 余程牛乳が嫌いなのか?というほどの目つきで。
 リュミアも雰囲気が恐くて、そんなリュクトを見守るだけだった。
 空気が悪くなりそうな予感に、アトゥイが口を出した。

「坊や、そんなに牛乳睨んでもなくなりゃしねーぞ?」

「睨んでませんよ……ただ、午後からずっと飲んでるのでちょっと飽きただけです。」

「飲んだってどのくらい?」

「20杯くらい?」

 リュクトの答えにダークエルフ4人が固まる。

「な、なんだってそんな。」

 イメラの至極まっとうな意見にリュクトはポツリと呟いた。
 
「背が……まだ成長期が来ないもので。」

 呆れた表情でリュクトを見る、確かにリュクトは小柄だが19歳になってまだ成長期を期待しているとは。
 それよりも、大量に牛乳を飲んで明日腹痛にならないかが心配だ。
 眉を寄せて牛乳の入ったカップを手に取ったリュクトに、申し訳なさそうにカムギは止めに入る。

「リュクト殿、牛乳を飲んでも無駄と思うでござるよ。」

「俺もわかってるんですが、少しでも努力しようかと。」

「いや……」

 やけに歯切れの悪いカムギにリュクトはカップを置いて言葉を待つ。

「リュクト殿の成長が止まったのは、例の解毒薬の副作用の恐れがある故。
 どうやっても年をとるということはもうないかと……」

 その言葉にリュクトが固まる。

「いあほら、これでいつまでもお肌がピチピチゆえ良かったではござらぬか。」

 カムギのずれた返答にリュクトは立ち上がり、両の拳に力を込める。

「いいわけないでしょうが、このスットコドッコイっ」

 言いながらカムギの胸倉をつかみガクガクと激しく揺さぶる。
 頭をシェイクされる感覚と胸倉を捕まれる息苦しさにカムギが堕ちるのに、時間はかからなった。
 
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